許容ではなく受容すること【バイステックの原則】ありのままを受け入れること(受容)

介護の知識等

施設介護歴13年の社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士のひろゆきと言います。

バイステックの原則は、対人援助の仕事をする者にとって、基本な姿勢や原則と言われています。

これは、介護職にも必要な姿勢と言えます。

バイステックの原則は全部で7つありますが、

今回は、その一つである『受けとめること(受容)』について

F・P・バイステック「ケースワークの原則」尾崎新、福田俊子、原田和幸訳 誠信書房

を参考に説明していきたいと思います。

受容とは何か

まず、受容とはそもそもどういうことなのでしょうか。

バイステックは以下のように述べています。

クライエントの受け止める態度ないし行動は、ケースワーカーが、クライエントの人間としての尊厳と価値を尊重しながら、彼の健康さと弱さ、また好感を持てる態度ともてない態度、肯定的感情と否定的感情、あるいは建設的な態度および行動と破壊的な態度および行動などを含め、クライエントをあるがままの姿で感知し、クライエントの全体にかかわることである。しかし、それはクライエントの逸脱した態度や行動を許容あるいは容認することではない。つまり受け止めるべき対象は、『好ましいもの』などの価値ではなく『真なるもの』であり、あるがままの現実である。
 

わかりやすく砕いて説明したいと思います。

クライエントというのは、介護現場で言うと利用者や入居者のことになります。

ケースワーカーは、介護職やケアワーカーと言っていいでしょう。

そして、

ケースワーカー(介護職)は、

クライエント(利用者・入居者)の人間としての尊厳と価値を尊重するということが書かれています。

また、バイステックは以下のようにも述べています。

援助を目的としてクライエントを理解すること、クライエントに敬意をはらうこと、また愛すること、把握すること、あるいは認識すること、援助すること、さらに迎えることなどである。
 

何を受容するのか

バイステックは、

ケースワーカはクライエントの

  • 健康さと弱さ
  • 好感を持てる態度、持てない態度
  • 肯定的感情、否定的感情
  • 建設的な態度および行動
  • 破壊的な態度および行動

を受容することとし、

クライエントのあるがままの姿で感知し、

クライエントの全体にかかわるが大切だと述べています。

わかりやすく言うと、

利用者の病気や健康状態に関わらず、

好かれたり、嫌われたりする態度にも関わらず、

あらゆる感情や態度など、これらを含んだすべてを受け止めることが大切だという事です。

ありのままを受け止めるという事ですね。

なぜ受容が必要なのか

なぜ、クライエントのありのままを常用することが必要なのかというと、

それは、信頼関係を作るためです。

人は誰しも、

  • 認めてもらいたい
  • 話をきいてほしい

といった、承認要求を持っています。

その、承認要求に対して、

  • あなたの事を理解しようとしていますよ
  • あなたの気持ちを聞こうとしていますよ

と言った、受容的態度をとることにより、

クライエントに信頼感を与えることが出来ます。

クライエントとケースワーカーという援助関係において、

信頼関係は必須となってきます。

信頼関係を作るために、受容すること・受容的態度をとることが大切になってきます。

許容ではなく受容すること

信頼関係を作るために、受容することが大切だと説明しました。

つぎに、バイステックは以下のように述べています。

ケースワーカーがクライエントを受け止められるようになるにつれて、クライエントは自分自身を受け止め始める。クライエントが自らを受け止め、自分にかかわるようになることは、クライエントが自分で自分を助けようとする新たな努力を開始することである。
クライエントの中で、自分を信頼するという内的変化が生まれてくるのである。

介護現場で例えると

入居者の思いを介護者が受け止めることにより、入居者と介護者の間に信頼関係ができてくる。

入居者は自分の思いを認めてもらえたことにより、自尊心を回復することが出来る。

そして、あらたな課題へと目を向けることができる。

といことではないでしょうか。

ここで大事なのは、

バイステックのいう受容と言うのは、

単に、入居者のありのままを受け止めるだけでなく、

そこから、入居者と介護者の新たな関係性を構築していくという、

建設的な内容も含まれているのだという事です。

ただ単に、受け止めただけだと、次の展開につなげることだ出来ず、

ただの許容になってしまいます。

受容した先を意識することが大切になってきます。

事例 ~認知症高齢者の場合~

ここで実際の施設介護の現場の事例を考えてみましょう。

短期記憶の保持が難しくなってきた認知症入居者の場合です。

夕方になると、自分の居場所がわからず、徘徊をはじめます。

そして、「家に帰るにはどこにいけばいいのか」「帰り道はどこか」とすれ違う人に話しかけていきます。

ここで介護職としてどのように対応すればいいんでしょうか。

「ここは施設でお泊りなので帰れないですよ」と言った返事をすることが多いのではないでしょうか。

今回、説明した「受容する」ことを考えると、

もう少し深く考える必要があります。

介護施設に入所するというのは、基本的に、在宅での生活が難しくなったということです。

認知症の進行具合にもよりますが、認知症の高齢者の場合、家に帰るというのは難しく、

単に帰り道を教えればいいというわけではありません。

教えたとしても、短期記憶の保持が難しいので、無事に家に帰るのも難しいかもしれません。

では、なぜ帰りたいと思ったのか。

それは、施設が帰りつく場所ではないからです。

また長年住み慣れた場所、安心できる我が家に帰りたいという思いがある。

そういった思いを受容する必要があります。

また、どんな家だったのか、どこに家はあるのかなど質問するのも良いかもしれません。

質問することで、自分に関心を持ってもらっているのだと、

安心感を与えることが出来るかもしれません。

「あなたの思いを理解しようとしていますよ」という受容的態度の表し方の一つです。

安心感を与えて、介護者の事を信頼することが出来れば、

「今日はもう遅いので泊っていてください、明日送ります」とか、

「明日、家族の方が迎えに来るようですよ」など伝えて、お部屋に案内するのも良いかもしれません。

 

短期記憶の保持がどの程度できるかによって、対応が難しくなる場合もありますし、

安心感を与えて、信頼関係を作るのに、時間がかかる場合もあると思います。

 

ただ、入居者の「帰りたい」という思いを受容し、次の展開に持っていく。

このことを意識するだけでも、より良いケアができると思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

ありのままを受容するだけでなく、

信頼関係を作るために受容的態度を大切にし、

次の援助に繋げていく。

ただ単に受容していると許容になってしまいます。

クライエントと援助者入居者と介護者の関係性を構築するために

受容することが大切になってきます。

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