個別化できてる?【バイステックの原則】個別化を考えるための4つの視点と、現場ですぐできる個別化の方法

介護の知識等

こんにちは。

施設介護歴14年、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士のひろゆきです。

今回は、

バイステックの7つの原則の一つ「個別化」について説明したいと思います。

参考図書:F・P・バイステック「ケースワークの原則」尾崎新、福田俊子、原田和幸訳 誠信書房

個別化とは何か

まず初めに、

バイステックの話を見てみましょう。以下のように述べています。

「クライエントを個人としてとらえるということは、一人ひとりのクライエントがそれぞれ異なる独特な性質を持っていると認めて、それを理解することである。…このような考え方は、人はひとりの個人として認められるべきであり、クライエントは「不特定多数の中のひとり」としてではなく、独自性を持つ「特定のひとりの人間」として対応されるべきであるという人間の権利にもとづいた援助原則である。

人はみんな、ひとりひとり違いがあり、個人として認められる存在です。

独自性を持つ「特定のひとりの人間」であり、

人間の権利にもとづいた援助の原則です。

 また、

「人は誰でも、自分が二人とはいない独自な存在であると意識している。この意識は、人が援助を求めて社会福祉機関を訪れるときに、特に強くなる」
 

と述べています。

この特に強くなる意識と言うのは、

クライエントは、他の誰でもない私の問題やニーズを知ってほしい、わかってほしいと思っています。

ということのなのだと思います。

なぜ個別化することが大切なのか

では、

援助の関係のおいて、なぜ個別化が大切なのでしょうか。

基本的には、

対人援助職は複数人を相手にするのではなく、個人を相手にしています。

ただ、

介護施設の職員の場合、

一人で複数人の利用者を相手にすることもありますが、

基本的には個人を対象としています。

個人が集まって上での、複数人の利用者を相手にしています。

一人一人の個人は、違いがあり、独自性をもつ一人の利用者と考える方が適切です。

それは、援助関係を形成する上で、

一人一人の利用者の特徴をとらえてケアすることが、必要だからです。

 

バイステックの言葉も見てみましょう。

「クライエントが、ケースワーカーから個人として認められていると感じたり、また自分の問題を理解されていると感じられるようになれば、彼は援助関係に自ら参加してくるだろう。つまり、援助関係が形成できるか否かは、われわれがクライエント一人ひとりを個人として捉えられるか否かにかかっているのである。」
 

援助関係を形成する上で、個人としてとらえることは必須であり、

援助者として、クライエントを個人として認めることにより、

クライエント自身も、援助関係に協力してくれるということなのだと思います。

もし、利用者との関係がうまくいっていなければ、

「あなたは私にとって特別な人なのですよ」という気持ちで接してみてはいかがでしょうか。

個別化するための4つの視点

偏見や先入観を取り払う

偏見や先入観を取り払うと言っても、簡単ではないと思います。

まずは、自分自身の感情や考え方に気が付く必要があります。

対象となる利用者のイメージを書き出してみても良いかもしれません。

そして、そのことを脇に置いておいて、利用者と接してみると良いのではないでしょうか。

人間行動に関する知識を持つ

バイステックは、

「諸科学の知と洞察、とりわけ医学、心理学、精神医学、社会学、哲学などの知識をワーカー自身の体験や『常識』にきちんと加える必要がある」
 

なかなか難しい内容になりましたが、

医師や心理士になれと言っているわけではありません。

日々の体験や、常識といわれることを、学術的にとらえるということなのかもしれません。

例えば、

クライエントがお腹が減ったと思えば、それは

  • お腹が空っぽになり、食べたくなった。それは血糖値が下がっているから(医学的)
  • テレビでタレントがおいしそうな食べ物を食べていたから、自分もおなかが減ったように感じ、食べたくなった。(心理的)
  • 人間は食べる生き物だ(哲学的?)

などと言った捉え方ができると思います。

利用者の行動をとらえる時に、その行動の裏側にはどのような思いがあるのか知る上で、

人間行動に関する知識が役立つのだと思います。

クライエントの話を聞き、よく観察する

学術的な知識がなくても、これはできると思います。

利用者と関り、話を聴く。そしてよく観察すること。

利用者の関する情報のインプットの量を増やすということなのだと思います。

これには時間がかかりますが、日々の積み重ねで大切で、

利用者の話を聞く姿勢や観察する姿勢が問われています。

また、日々の暮らしの中で、利用者も変化していきます。

利用者の体調や気持ちの変化に気づくことも、個別化の一つなのだと思います。

クライエントのペースに合わせる

利用者のペースに合わせる。

話のスピードであったり、動作のスピードであったりと、

利用者のペースに合わせることも、個別化の一つです。

忙しい業務の中で、ついついと介護者側の都合やペースになってしまうこともありますが、

ひとりの個人としてとらえることが、大切です。

私たちの介護職の業務の中の一コマではなく、

利用者はそれぞれ個別性を持った人間であり、その特徴に合わせていくことが大切です。

必ずやってほしい!介護の現場ですぐにできる個別化の方法

個別化を考える上で4つの視点をお伝えしましたが、

最低限これだけはやってほしい、

すぐにできて効率的で効果的な

個別化を意識する方法は、

利用者の記録を読み直すことです。

日々の介護の記録だけでなく、入所時にアセスメントした情報などを読み直すこと。

生活歴や、家族、病歴など、これは個人の情報としては、

唯一無二の情報であり、他の誰とも異なる情報です。

それらを読み直すことで、個人としてとらえなおす、

きっかけにしてほしいと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

介護職として経験を積んでくると、

ケアがパターン化してくることがあります。

こういったケースには、こういった対応をなどといって、

ケースをみて、人を見ないことが起きてしまいます。

医者でも、症状や数値だけ見て、治療方針を決めてしまうような場合です。

人を見ていない、その人の生活や思いを知ろうともしていない。

いろんな理由があるのでしょうが、

ケアがうまくいっていない理由の一つに個別化の原則があるのかもしれません。

実際の介護現場で振り返ってみてはいかがでしょうか。

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